熱を伝えるリーダーになるには

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 みなさん、こんにちは。今回は、認知科学に基づいたリーダーシップについて紹介します。参考文献は、 李 英俊 (著), 堀田 創 (著)「チームが自然に生まれ変わる 「らしさ」を極めるリーダーシップ」です。

1.はじめに

 「メンバーのモチベーションが感じられない」「職場の雰囲気がたるんでいる」など、自分ではどうすることもできない悩みを抱えているリーダーの方も多いと思います。私も、その中のひとりです。

 しかし、解決しようと思うのなら、原因は外に見出すのではなく自分自身にあることに気づくのが重要です。たるんでいるのはリーダーである自分自身であり、なぜたるんでしまうのかをこの著書では認知科学のメカニズムを用いて解説しています。そして、解決に向けてどのように行動すればよいかを示しています。

2.概要

1️⃣なぜ、職場がたるんでいるのか

・職場のマネージャーは、メンバーに対して従来のマネジメント方法が通じなくなった。

 なぜなら、アフターコロナでリモートワークなどの働き方が多様になった。上司と部下の空間的な距離は遠くなり、メンバーに細かな指示や態度でプレッシャーを与えても動かすことができなくなった。

・メンバーの心を動かすものが変わった。(外的要因→内的要因)

 外的要因・・・役職、報酬、結果
 内的要因・・・成長、好奇心、情熱、自己表現

 今は、リーダーはメンバーを内面から動かすことができなければチームを動かすことができない時代にある。

 そのために、メンバーを動かし自主的に働いてもらうには
  ①ゴールをデザインすること
  ②エフィカシー(できるかどうかはわからないが、やれる気しかしない!) をメンバーに持たせることが大切になる。

2️⃣なぜ、たるんでしまうのか・・・認知科学のメカニズム

◯認知科学とは

 認知科学は、情報処理という観点から、生体(特に人)の知の働きや性質を理解する学問。(https://www.jcss.gr.jp/about/whats_cogsci.html
 
 認知科学では、人間の認知プロセスやメカニズムを理解するために、人間の内部モデルを使う。

 内部モデルとは、簡単に言うと「ものの見方」になる。この内部モデルの違いによって、同じ外部刺激に対しても異なる反応や行動が生じる。

つまり、「外部刺激 → 内部モデル → 行動」の順に人は動く。

例えば、マネージャーが外部刺激(1ヶ月で30人の新規顧客を訪問せよ)をメンバーに与えたとする。
 Aさんは やりなさい→「この任務なら楽勝でこなせる」→すぐ動く
 Bさんは やりなさい→「この任務はしんどい。どうやって断ろうか」→動かない
というように、外部からの刺激は同じでも、内部モデルが違うと行動が変わる。

詳しくは、このサイトが分かりやすく解説しています。(https://note.com/runforsmile/n/n95414efa0c22

◯なぜ、たるんでしまうのか

 仕事のパフォーマンスを上げるには、消極的なBさんの内部モデルを積極的にすることが重要だ。

 これまでは、ビジネスパーソンのモチベーションはみんな外的要因(役職、報酬、結果)によるものだった。Bさんが任務が嫌であっても報酬による外部刺激を与えれば動いていた。
 しかし、最近は内的要因(成長、好奇心、情熱、自己表現)がモチベーションになっている。この場合は、報酬を与えてもメンバーは動かない。

 また、内部モデルは無意識的な計算プロセスなので簡単に変えられない。そのため、マネージャーがメンバーを根性論で指導しても効果がない。

 つまり、マネージャーは、内部モデルに対するアプローチを変える必要がある。
 なのに、それに気づけていないリーダーに問題がある。

◯では、どうすればよいのか

 メンバーの内部モデルを変え、これまでとは違う現実に臨場感を抱くようにすれば、自ずとメンバーの行動は変わる。
 なぜなら、人は見たものをそのまま認知するわけではなく、内部モデルを通して認知したものを現実としている。(これは、認知科学 プロジェクション・サイエンスの考え方に基づく。)
 
 内部モデルを更新するには「ゴール設定」が重要だ。
 また、ゴール設定の条件は①心の底からやりたいこと ②現状の外側にあること が大切だ。メンバーが没入して主体的に行動し続けられる。

 これからのリーダーは、メンバーや組織の内部モデルを書き換えることで持続的に行動を変えるプロセスが必要になる。プロセスは、下記にまとめる。

3️⃣熱を伝えるリーダーになるための行動

1.have toを捨て、want toに気づく

 まずは、心の底からやりたいと思えること(want to)を見つける。しかし、現状はやらなければならないこと(have to)にまみれているため見つけにくい。そこで、have toを徹底的に捨てていく。

 日常の行動をリストアップして、have toを見える化する。
 仕方なくやっていることを消してみる。
 自分のコンプレックスや憧れに潜んでいないか、確認する。

 have toが剥がれてくると、want toが少しずつ見えてくる。または、下記の方法でも見つかる。

 ストレングス・ファインダーのツールを利用してみる
 子供の頃に夢中になってやったことを挙げる
 長年にわたって続けていることを挙げる

2.まずhave toを捨てる決断をする(方法はあとで考える)

 人間の本能の働きの一つに、「心理的ホメオスタシス」がある。これは、いくら外から刺激を与えても、人はこれまで通りの日常へと無意識のうちに戻っていこうとする機能だ。
 この機能があるために、ほとんどの人が変わろうと思っているのにかかわらず変われない。

 だったら、ホメオスタシスにより戻ろうとする基準点を変えてしまえば良い。そのために、have toを捨て、want toに没入することが大切だ。

 have toは、「これまで通りの日常」にある作業や業務に潜んでいる。捨てようとあれこれ考えているうちにホメオスタシスによって行動を邪魔される。だから、まず決断することが大原則になる。

 すると、have toの「日常」へ没入しなくなり、want toへ没入できる。

3.組織のパーパスを自分ごと化する

 1.2のステップで、リーダー自身が高い熱量を持ち続けて行動するようになった。
 ここからは、チームへ熱量を広げていくステップになる。

 パーパスは、組織のwant toである。パーパスと個人のwant toで重なる部分を見つけ、個人のゴールに変えていく下記のプロセスが、パーパスの自分ごと化になる。

 ・自分のwant toを現状の外側に設定する
 ・組織のパーパスを確認する
 ・組織のパーパスとの共通項を見つける
   完全に一致しなくてよい。折り合いを見つけてしまえば自身が主体的に行動できる。
 ・自分だけのフレーズに変換し、臨場感を高める

4.メンバー全員のやりたいことを引き出す

 リーダーのあなたから見て、メンバーがたるんでいる/さぼっているように見えたとする。現時点のメンバーの内部モデルからすれば、それくらいで満足するレベルなのだ。
 
 リーダーが1〜3のステップで変わったように、このステップではメンバーの見ている景色を変える行動を促すための方法を記載する。

 ・自分自身のwant toに気づかせる
   本音で会話するために、「1on1」でのオフレコな面談が理想。
   いきなり仕事の話をせず、want toを引き出すための問いかけをする。
   本人が気づいていないことにも注意して聴く。
 ・組織のパーパスを自分ごと化させる
   組織のパーパスを一緒に振り返り、個人のwant toに関係しそうか対話を重ねる。
   部分的であっても、自分ごと化している確信をメンバーが抱くことが重要。
 ・ゴールへのエフィカシーを高めていく
   メンバーのhave toを外していき、want toに迎えるよう環境を整える。

5.フィードフォワード(フィードバックではない)

 個人のゴール世界に対する臨場感を高めるために、未来からのフィードバック型面談をメンバーと行う。あるべき未来像から逆算して現在何をすればよいか具体化すると、ゴールの臨場感が湧いてくる。

 このとき、フィードバック型(過去を振り返る)の面談になってしまうと、メンバーは現実に臨場感を抱き、ホメオスタシスが働いてしまう。
 フィードバックも大切だが、フィードフォワードと混ぜないように気をつけないといけない。

4️⃣まとめ

 リーダーと各メンバーが各自のゴールに対するセルフ・エフィカシー(実現できそうだという確信)を高めていくと、チームや組織のエフィカシーも伸びていく。
 組織の約30%がエフィカシーを持つと、「自分たちならできる!」という集団的エフィカシーを持つようになる。自分たちのwant toを追求した結果が組織のパーパスを実現するのに加速し、結果、業界レベルの変革をリードする強い組織に生まれ変わる。

3.最後に

 人は本能的に現状に戻ろうとするホメオスタシスを持っているが、流れに逆らわずにうまく流れを使うことで「たるんだ組織」を「自分たちのwant toを追求する組織」に導くことができる。リーダーシップに認知科学のメカニズムを用いて解説されていて、新鮮な体験をすることができました。

 マネージャーの立場になっても理論を学び実践することはとても重要だと感じました。これからも、経験したことを言語化して皆さんと共有していきます。

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